地盤沈下は防げる?地盤沈下対策の工法や費用について解説
広域もしくは局地的に地面が徐々に沈んでいく地盤沈下。地震だけではなく、様々な原因で発生する可能性があります。また、一度沈下が発生すると自然に元に戻ることはないため、まずは地盤沈下の発生を防ぐことが重要といえます。
そんな地盤沈下は、事前に対策することが可能です。今回は、地盤沈下対策の工法や費用について解説します。
目次
1. 地盤沈下の原因
地盤沈下は地震が原因で発生するものだと考えている方が多いかもしれませんが、他にも原因があります。自然発生的な原因では、地下水の変動による土地の強度変化、乾燥による土地の収縮、地下空洞の崩れなどがあります。地盤沈下の原因には、人為的なものもあります。例えば、近隣で大きく土地を掘り返すなどの大規模工事が行われたとき、過剰な地下水の汲み上げや天然ガスの過剰採取が行われたときなどに、地盤の強度が弱くなって地盤沈下が引き起こされる可能性があるのです。他にも、地盤の弱いところに重たい建物を建てたり、盛土の締固めが不十分であったり、線路や幹線道路などの振動が積み重なったり…様々な要因が地盤沈下につながります。
2. 地盤沈下対策
地盤沈下は自然発生的なものでもありますので、完全に回避することはできません。しかし、いくつかの対策を講じることでリスクを軽減することは可能です。
土地購入前にできる対策から、住宅を建てるときにできる対策、住宅建設後をフォローするための対策までご紹介します。
2-1. 土地購入前にリスクを回避!自分で地盤を詳しく調べる
これから土地を購入するという方は、土地選びの時点でも地盤沈下対策が可能です。それは、事前に地盤について調べることです。
地盤調査は、自分でもある程度行うことが可能です。まず確認していただきたいのは、各自治体が公開しているハザードマップです。ハザードマップには、被害が発生する可能性がある区域、避難場所・避難経路が示されています。ハザードマップは、各自治体や国土交通省のHPから確認することができます。
地盤の歴史を知ることも地盤の状態を知るのに有効です。実は、土地の名前にどんな漢字が使われているかによって、地盤の特徴をイメージすることができます。例えば、水をイメージするような、水・沼・船・谷といった漢字や、水辺の生物である鶴・亀・鷲といった漢字、部首が『さんずい』である漢字、他にも災害をイメージさせるような漢字が地名に含まれている場合は軟弱地盤である可能性があります。また、地形の特徴からも軟弱地盤であるかを予想することができます。埋立地、干拓地、湿地、後輩湿地、谷底平野、デルタ海岸や河口付近、砂丘や砂州の間の低地などは、軟弱地盤である可能性が高いのです。こうした特徴は、現在だけではなく過去についても調べる必要があります。例えば、今は住宅が立ち並んでいても、昔は沼や河であったという地域もあるのです。過去について調べるには、図書館に行ってみましょう。古地図や航空写真、郷土史をみることができます。古地図や航空写真を今の地図と照らし合わせてみると、昔、何があったかのヒントになります。郷土史では、地域の災害の歴史についても知ることができるでしょう。近隣に図書館がない場合は、国土地理院のホームページでも古地図や航空写真を見ることが可能です。
もう一歩踏み込んで調査する場合には、法務局で登記簿を確認しましょう。現在の地目(不動産登記法で決められている土地の種類)は、「宅地」となっていることがほとんどですが、閉鎖登記簿や土地台帳を調べることで、過去の地目についても確認できます。この地目が田・地沼、ため池になっている場合は軟弱地盤の可能性が高いです。
実際に、自分の足で現地を歩いて調査してみるのもオススメです。周辺の土地の状態や戸建住宅の基礎部分を見てみたり、地面を踏んでみて強度を感じたりすることは、最新の情報収集であるといえます。雨降りの後にも足を運び、水はけの状態を確認しましょう。水はけが悪かったり、苔が生えていたりする場合は、地質に問題がある可能性があります。
このように、土地購入前であっても、地盤沈下が起きる土地をできるだけ回避するための対策が可能です。
2-2. 建設前に!プロによる徹底的な地盤調査
一部の例外を除いて、住宅の建設前には基本的に地盤調査が行われます。法律で決まっているわけではないのですが、阪神・淡路大震災後に耐震に関する建築基準が変更になり、瑕疵担保責任が発生するようになりました。それに伴い、新築住宅は引渡しから10年保証が必須となり、住宅会社は瑕疵担保責任保険に加入することになったのですが、この保険に加入する条件に、地盤調査が含まれているのです。とはいえ、どの程度の地盤調査が行われるかについては、土地の状況や建築業者によって異なります。
地盤調査には、大きくスウェーデン式サウンディング試験、ボーリング試験、平板載荷試験の3種類があり、一般的な戸建て住宅の場合はスウェーデン式サウンディング試験が採用されることが多いです。しかし、この方式の場合、同時に土質を調査することができません。できれば建築会社がどのような調査をするのかを確認し、必要に応じて土質調査を追加するなどしてもよいでしょう。
2-3. 地盤が弱い場合は…信頼のおける業者で地盤改良工事
地盤調査の結果、地盤が弱いことが判明した場合は地盤改良工事を行います。
地盤改良工事には「表層改良工法」「柱状改良工法」「小口径鋼管杭工法」の3種類があります。
それぞれの工法の概要と費用相場、メリット・デメリットをご紹介します。
2-3-1. 表層改良工法
表層改良工法とは、セメント系固化剤を使用して地表面を固める地盤改良工事のことです。地盤の軟弱な部分が、地表から2mまでの浅い場合に用いられます。
表層部の軟弱地盤部分を掘削して搬出し、セメント系固化材を新たに搬入した土に混ぜて十分に締固めます。
費用相場 50万円程度 ※床面積20坪あたり
メリット
費用が安く、工期も1~2日と短いです。小型重機による工事になるので、狭小地や変形地でも工事が可能。地中に石やコンクリートなどの障害物が入っていても対応可能な点もメリットです。
デメリット
軟弱な地盤が地表から2m以内でなければ適用できない点がデメリットです。地盤改良面よりも地下水位が高い土地では工事ができず、表面の勾配が大きい土地でも工事ができない可能性があります。
職人による技術・経験の差が出やすい工法で、場合によっては十分な強度にならない可能性があります。
2-3-2. 柱状改良工法
柱状改良工法とは、セメントミルクを注入しながら円柱状に地盤を固めた改良杭によって建物を支える地盤改良工事のことです。軟弱地盤の深さが地表から2~12mまでの場合に用いられます。
費用相場 100万円程度 ※床面積20坪あたり
メリット
費用が比較的安く、工期も2~3日と短いです。また。強固な支持層がない場合にでも適用できることは大きなメリットです。
デメリット
腐植土などの特定の地盤ではセメントが固まらないことがあるので、この工法が使えるかは慎重に検討する必要があります。また、一度工事をしてしまうと、原状回復が難しい点も注意が必要です。改良杭をすべて撤去したい場合は費用が高額になりますし、売却したい時には価格低下につながる可能性もあります。
2-3-3. 小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法とは、鋼管を地中深くにある硬質地盤(支持層)まで打ち込み、杭の支持力によって建物を支える地盤改良工事のことです。地中30mの深さまで地盤補強ができます。
費用相場 100万~200万円程度 ※床面積20坪あたり
メリット
工期は1~2日と短いです。
3つの工法の中で最も強度が高く、3階建てなどの重たい建物でも適用できます。柱状改良工法よりも小型の重機で工事可能ができるため、非常に狭い土地や変形地でも対応可能です。
デメリット
他の工法と比べて、費用は高額である点がデメリットです。また、硬質基盤(支持層)がなければ適用できない点も注意が必要です。工事の際の振動や騒音が大きいこともデメリットといえるでしょう。
2-4. 念には念を!『地盤保証』に加入
しっかり調査をして、必要に応じて地盤改良を行った後に住宅を建設したとしても、絶対に地盤沈下が発生しないとはいえません。建設後もリスクを回避するためには『地盤保証』に加入しましょう。瑕疵担保責任保険には、地盤沈下の保障は含まれていません。
3. まとめ
地盤沈下が起こる原因は地震だけではありません。地震以外の自然発生的な原因の他に、人為的な原因で発生することもあります。ですが、地盤沈下は事前に対策をすることでリスクを軽減することが可能です。
土地を購入する前に下調べをし、住宅建設前にしっかりと地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良工事を行いましょう。時間と労力、そしてコストがかかることではありますが、住宅を建てた後に地盤沈下が起こってしまってはもっと多くのコストがかかり、不便な生活を強いられることになります。また、事前に対策をしておくことで、長く安心して暮らすことができるでしょう。
地盤調査や地盤改良工事を行う場合は、業者選びも重要です。特に、地盤改良工事は職人によって質の差が生まれやすいです。適正な価格かどうかを知るために、相見積もりをとって価格の比較をすることは重要なことですが、価格だけで決めるのは危険です。経験と技術力があり、納得のいく価格で施工してくれる業者を選んでくださいね。
対策を行ったのにも関わらず、万が一建物が不動沈下や傾いた場合には、地盤改良をしつつ建物を水平に戻す工法である株式会社横浜グラウトの『ハイブリッド工法』があります。ご参考ください。