地震のリスク軽減には地盤調査が有効!地盤調査で安全対策を強化しよう
地震大国である日本では、近い将来大きな地震が発生するといわれています。自然災害である地震を避けることや止めることはできませんが、事前に対策をすることで被害を軽減することは可能です。避難時に使えるキャンプグッズを購入したり、食料や飲料を備蓄したりすることも大切ですが、そうした物品を保管している家自体が壊れてしまっては、元も子もありませんよね。
そこで今回は、地震のリスク軽減に有効な『地盤調査』について詳しくご紹介いたします。
目次
1. 地盤調査とは
地盤とは、地面から深さ約100メートルまでの部分のことです。日本の多くの土地の地盤は、主に約1万年前以降にできた沖積層と約1万年前から200万年前にできた洪積層という二つの層でできています。古い洪積層の方が強く良好な地盤であり、沖積層は新しい地盤であるため良好な地盤とはいえません。この比較的新しい沖積層の層が厚いエリアの地盤は、地震に弱い地盤であるといえます。
この地盤が、どの程度の重さに耐えられるか、地耐力(沈下に抵抗する力)はどれくらいあるのか等を調べる調査のことを、地盤調査といいます。
1-1. 地盤調査はいつ行う?
土地に建物を建てる前に行われます。新しく購入した土地に注文住宅を建てる場合はもちろん、中古住宅を建て替える場合でも地盤調査は行われます。
一般的には、どのような家を建設するかをある程度先に決め、その家を建設できるのかを調査するという流れです。土地や中古住宅の売主が地盤調査報告書を保管している場合などは、事前に地盤調査の情報を確認することができます。建売住宅の場合は、メーカーが住宅を建てる前に調査をしてくれています。そのため、建売住宅を購入する前には、地盤調査報告書をよく確認するようにしましょう。
1-2. 地盤調査は誰が行う?
地盤調査は、住宅の建設を依頼したハウスメーカーや工務店と提携している地盤改良専門業者が担当することが多いです。地盤調査を行った結果、地盤改良が必要になった場合は、そのままその業者が地盤改良を行うことになります。
地盤調査や地盤改良は、業者によって技術力の差が出るので、業者の選定が非常に重要であるといえます。各ハウスメーカーや工務店は、信頼のおける業者を選定しているとは思いますが、自分自身が信頼できる地盤改良業者を指定することも可能です。その場合、ハウスメーカーや工務店を通して依頼することになるでしょう。
業者選びだけでなく、どのような調査を行い、どのような調査結果となり、その結果どのような地盤改良工事を行うのかまで、よく話を聞いて納得して行うようにしましょう。
2. 地盤調査の目的
地盤は、建物の基礎を支える部分です。この地盤が弱いか強いかによって、建物を建てた時の安全性や耐久性が異なってきます。地盤の状態を正しく把握することによって、建物を建てる前に必要な対策(地盤改良など)をとることができるのです。すなわち、地盤調査を実施することにより、地震や地盤沈下などのリスクを軽減することができるというわけです。地震の発生リスクが多い日本では、この地盤調査をいかにしっかりと行うかによって、家を建てた後に、より安全に、安心して暮らせるかどうかがかわってくるといえるでしょう。
同じ日本の中でも、地震被害のリスクの高さはエリアによって異なります。特に地震被害リスクの高いエリアにおいては、より一層地盤調査は重要になります。
2-1. 地震被害リスクを調べるには
まずは、自分の住んでいる土地や、これから家を建てようと思っている土地の地震被害リスクを調べることも重要です。
最も簡単な方法は、自治体や国土交通省が公開しているハザードマップを確認することです。ハザードマップを見れば、各エリアの被害予測を確認することができます。
3. 地盤調査をしなかった場合のリスク
逆に、しっかりと地盤調査をせずに建物を建設してしまった場合はどうなるでしょうか?
地盤が弱いところに、地盤改良などの必要な対処をせずに建物を建ててしまった場合、地震が発生した時に激しい揺れによって家が傾いたり、地盤沈下によって家が傾いたり、液状化現象が発生して家が傾いたりと、家が傾いてしまうリスクが高まってしまいます。家が傾く原因は地震だけではなく、弱い地盤に重たい建物を建てたことによる地盤沈下や、地下水位の変化などによる液状化現象など、地盤の弱さが原因となってしまうこともあるのです。自然発生的な原因だけではなく、周辺の土地の大規模工事の影響など、人為的な原因で発生することもあります。
家が傾いてしまうと、倒壊の恐れがあるだけではありません。家具が安定して設置できなくなったり、窓や扉の開閉が困難になってしまったり、下水道管が逆勾配になるなどして排水が悪くなったりして、生活に支障をきたします。また、傾いたままの家で生活をすることで体調に支障をきたすこともあるのです。一見傾いているとは思えないようなわずかな傾きであっても、家や住民に悪影響を与えてしまう可能性があります。
4. 地盤調査の種類と費用目安
地盤調査の方法は複数ありますが、ほとんどの場合『ボーリング調査』又は『SWS試験(旧 スウェーデン式サウンディング試験)』のどちらかが採用されます。それぞれの方法についてご紹介します。
4-1. ボーリング調査
費用:25~30万円程度
期間:1日~数日程度
ボーリング調査とは、ボーリングロッド(鉄の筒)で地面に孔を開け、土を採取して地質を調べたり、ロッドの入り具合で地盤の強さを調べたりする調査方法です。具体的には、N値(地盤の支持力を算出する際に必要)、砂質土や粘土といった土質、土の密度、地層構成、地下水位などを調べます。
ボーリング調査は、最も基本的な地盤調査の方法で、この後ご紹介するSWS試験と比較して、より固い地盤や深いところ(10m以上)まで調査可能で、土の採取によって土質の調査も行うことができます。主にマンションやオフィスビルなどの大規模建築物の建設前の詳細な土質調査で用いられる方法です。
ただし、大規模な調査(約5m四方の面積・高さが必要)となること、作業や調査データの取得までに時間がかかること、そして費用が高額であることがデメリットといえるでしょう。
4-2. スクリューウェイト貫入試験(SWS試験)※旧スウェーデン式サウンディング試験
費用:5万円程度
期間:半日程度
戸建住宅の建設前に行う最も一般的な方法がスクリューウェイト貫入試験。略称で、SWS試験、SS試験と呼ばれることが多いです。令和2年10月まではスウェーデン式サウンディング試験という名称でした。ボーリング調査におけるN値に相当する換算N値を算出することが可能です。
SWS試験では、スクリューのついた試験機を使い、地盤がどれくらいの重さ(約100㎏まで)に耐えられるのか、重さに耐えられた場合は、どれくらいの回転でスクリューが貫入するのかを調べます。戸建住宅の場合は、建設予定地の四隅と中心部の5つのポイントで調査するのが一般的な方法です。全自動式の調査機の場合、1つのポイントにつき30分程度で調査できるので、半日もかかりません。全自動の他に、手動式や半自動式もあります。調査時間が短く費用もリーズナブルなのですが、詳細な土質調査はできません。また、10m以上の深い場所の調査も難しいです。
5. 地盤調査報告書の確認ポイント
地盤調査報告書は専門用語が多いですので、知識がなければわからないことがほとんどです。
地盤改良が必要か否かを判断するために知っておきたい、多くの戸建住宅で行われているSWS試験の確認ポイントについてご紹介します。
まず確認したいのが、自沈層の有無です。自沈層の有無を確認するには、調査報告書の貫入状態の項目に「ストン」と記載があるかをみてみましょう。自沈層とは、スクリュードットが回転なしの重りのみで沈んでしまう地層のこといい、「ストン」と記載がある場合は、自沈層である可能性が高いのです。この「ストン」というのは、「ものがストンと落ちた」といったときの「ストン」であり、ロッド貫入時の音や感触などで表現されているのです。「ストン」の他に「スルスル」「ジンワリ」「ユックリ」などの表現があります。荷重が0.75kN(約75kg)以下で沈んでしまっている箇所が多いことも、判断材料となります。その他、盛り土がされているかどうかも確認しましょう。
6. 地盤改良の方法
地盤調査を行った結果、地盤が弱いとわかった場合は地盤改良を行います。
地盤改良の方法には、『表層改良工法』『柱状改良工法』『鋼管杭工法』の3種類があります。費用も特徴も異なりますが、予算に合わせて選ぶものではありません。どの工法を使って地盤改良を行うのが適切であるかは、地盤の状態によって異なります。どの工法を、どのように行うかは、その後の安全性に大きく影響します。
先ほどポイントをご紹介したものの、地盤調査の報告書を見ても、よくわからないことが多いと思います。また、地盤調査報告書だけで判断することが難しいケースもあります。だからこそ、わからない点は専門家によく聞き、追加の調査は必要ないのか?どんな地盤改良が必要なのかを相談しながら進めるようにしましょう。
7. まとめ
地盤調査は、地震の多い日本において、安心して暮らしていくために非常な重要な調査であるといえます。ただし、地盤調査をただ行えばそれで安心というわけではありません。地盤調査をどのように行うか、また地盤調査の結果をどう判断するのか、そして結果をもとにどんな地盤改良をどのように行うかまで、慎重に行う必要があります。
地盤調査や地盤改良を行う業者は多数ありますが、業者によって技術や対応が異なります。安心して暮らしていくためにも、信頼できる業者に依頼するようにしてくださいね。