家が傾いている?そんな不安を感じたときの『直し方』について解説
生活をしている中で「なんだか家が傾いてる気がする」と思ったことはありませんか?気のせいであれば良いのですが、地震などの災害が発生していなくても、実際に傾いているという可能性は十分にあります。
では、家が傾いてるとわかったとき、直すことはできるのでしょうか?今回は、家の傾きを感じた時にできる、傾きの直し方について解説します。
目次
1. まずは知っておこう!家が傾く原因
地震でもない限り、家が傾くなんてなかなかないことだと思うかもしれませんが、家が傾く原因は、実は地震以外にもたくさんあります。地震の他に考えられる原因として多いのが地盤沈下です。地盤沈下も地震が原因なのでは?と思うかもしれませんが、地下水の変動による土地の強度変化、乾燥による土地の収縮などの自然発生的なものの他、近隣で行われた大規模な地盤工事や過剰な地下水の汲み上げ、地盤の弱いところに重たい建物を建てた場合などの人為的な原因があるのです。
地震や地盤が原因ではなく、建物自体に問題があるケースもあります。施工不良によって、建設したときから傾いているケースや、数年かけて傾いてしまうケースです。シロアリが家の構造部分などを食べてしまうことも家の傾きの原因となり得ます。
2. 本当に家は傾いている?家の傾きを調べる方法
家が傾いていると感じたときは、はじめは半信半疑であることも多いもの。
それでは、どのようにして家の傾きを調べたらよいのでしょうか?
方法としては、自分で簡易的に調べる方法と、本格的な機械を準備して調べる方法、プロに依頼して調べてもらう方法があります。
本格的な機械を準備するのはコストもかかります。基本的には、ビー玉を転がしてみたり、スマートフォンの水平器アプリを使ったり、自分でコストをかけずに簡易的に調べてみて、家の傾きがあるとわかった場合はプロに依頼してみましょう。本当に家が傾いていた場合は、早めの対応が必要です。
家が傾いている?ビー玉転がしからプロの道具使用まで家の傾きの調べ方をご紹介
3. 家の傾きを直す方法は複数あり!その方法とは?
程度にもよりますが、家の傾きは直すことができます。また、その方法は1つではなく複数あり、かかる費用も異なるのですが、どんな状態で傾いているのか、何が原因で傾いているのかなどによって、どの工法を使って直すのが良いかが変わります。
代表的な家の傾きを直すための5種類の工法と、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介しましょう。
*概算費用は1F床面積で60m2程度、10cm程度の傾斜修正の住宅の場合です
3-1. アンダーピニング工法 *総合評価○*
建物の周囲および建物の下の数十か所に小口径鋼管杭を刺す工法です。建物の下を掘削し、油圧ジャッキにて鋼管を継ぎながら挿入させ、基礎下にある硬質地盤(支持層)まで刺し込むことで、その杭を反力として地盤をしっかりと支えます。
*費用目安 600万~800万円程度
メリット
再沈下のリスクが低く、信頼性が高い工法です。どのような基礎構造にでも施工できますし、今後地盤沈下が起こることが予測されるような軟弱な地盤でも施工可能。コンクリート造などの重量建造物にも適用できます。
他の工法ではほとんどの場合、地盤の状況などによる免責事項がついてしまいますが、地盤の状況を問わずに再沈下保証が付く場合が多いのもメリットです。
デメリット
まず、費用が高額になる点がデメリットといえます。高度な専門的知識および経験が必要であるため、施工できる業者が少ないです。鋼管をきちんと継ぐ事が難しく、摩擦力が強いと支持層まで到達しないこともあります。この場合、地震などが発生した時に再沈下のリスクがあります。また、工期が長くなる点もデメリットといえるでしょう。一般的な木造住宅でも、1ヶ月はかかってしまいます。
建物の下を掘るため、工事中、建物が不安定になることがあります。そのため、まれに工事中の仮住まいが必要になるケースがあります。
3-2. 耐圧盤工法 *総合評価△*
建物の周囲および建物の下の硬質地盤(支持層)上の数十か所に、50cm×50cm程度の板を設置し、硬質地盤の反力で建物を上昇させる工法です。基礎を持ち上げる際には、油圧ジャッキを用います。
アンダーピニング工法に似ていますが、アンダーピニング工法は20m程度の深いところにある硬質地盤にまで到達できるのに対し、耐圧盤工法では硬質地盤が表層近く(2m程度まで)にある場合にのみ適用されます。
*費用目安 300万~400万円程度
メリット
比較的費用が安く、工期についても2~3週間程度と比較的短いです。また、どのような基礎構造でも施工できます。硬質地盤が表層近くにある場合には、信頼性の高い工法といえます。
建物の下を掘るため、工事中に建物が不安定になることがあるものの、工事中そのまま通常生活を続けられるので、仮住まいなどの手間や費用が省けます。
デメリット
硬質地盤上に耐圧版を設置しなければ再沈下の恐れがあり、この工法では再沈下保証がつくことはほぼありません。油圧ジャッキで建物を上昇させるため、偏圧がかかりやすく、基礎や外壁にひび割れが発生するリスクもあります。
仮住まいの必要はないものの、工事中に建物が不安定になる点はデメリットといえます。
3-3. 薬液注入工法 *総合評価◎*
建物周囲や建物内部十数か所から軟弱地盤(10m以内)に注入パイプを挿入し、土を固結させる薬剤を注入して地盤改良しながら土地を持ち上げ、建物を上昇させる工法です。
*費用目安 300万~350万円程度
メリット
費用が比較的リーズナブルで、工期が8~10日程度と短いです。工期が短いだけではなく、工事の間もそのまま通常生活を続けられるので、仮住まいなどの手間や費用が省けるというメリットもあります。
地盤が強化されるので再沈下のリスクが少なく、再沈下保証をしてくれる業者もあります。また、地震の揺れや液状化も低減されます。
デメリット
業者の技術力に左右されやすく、地盤改良にならない業者や布基礎では施工できない業者があります。また、隣家が近い場合、擁壁や石積みが近接している場合は、施工できない業者もあります。
※横浜グラウトのハイブリッド工法は薬液注入工法の一種ですが、特許工法であり、地盤改良と建物沈下修正を同時に行えます。また、布基礎の建物、隣家や擁壁(石積み)が近接していても施工可能です。
3-4. 土台上げ(プッシュアップ)工法 *総合評価▲*
建物の基礎と土台を切り離し、建物部分だけをジャッキアップして持ち上げ、建物を上昇させる工法です。建物と土台の間にスペーサーを設置して高さを固定し、隙間部分をモルタルで埋めて仕上げます。
*費用目安 150万~200万円程度
メリット
他の方法と比べて費用が安く、工期も10日間程度と短い工法です。基礎については、ベタ基礎でも布基礎でもどちらでも施工が可能。住んだままで工事ができるので、仮住まいなどの手間や費用が省けるというのもメリットです。
デメリット
地盤自体が良くなるわけではないので、再沈下のリスクが高く、再沈下保証もありません。建物と基礎をつなぐアンカーを切断することになるのもデメリットです。
工事費用自体は安いものの、玄関や浴室等を上げると破損してしまうので、その場合補修費用が別途かかる点などは注意が必要です。
3-5. 硬質ウレタン注入工法 *総合評価△*
床下の土間コンクリートに数十か所ドリルで孔を開け、ポリウレタンが原料の発泡剤を基礎と地盤の間に強制注入し、このウレタンの発砲膨張力を利用して建物を上昇させる工法です。発泡時にできる気泡が微細であるため、建築物の重さにも耐えられる強度があります。ベタ基礎の建物限定で、住宅の基礎の下に空間ができてしまっていることが原因で家が傾いているときに用いられます。
*費用目安 200万~300万円程度
メリット
費用がリーズナブルで、工期が1週間以内と短く、工事の間もそのまま通常生活を続けられるので、仮住まいなどの手間や費用が省けるというメリットもあります。
建物下の空洞充填には比較的適している工法といえるでしょう。
デメリット
地盤改良を行うわけではないので、地盤改良や耐震補強にはなりません。また、材料に経年劣化や加水分解等の懸念もあります。特に地震などで液状化が発生してしまったなどの軟弱な地盤の場合は、また地震が起こったときなどに地盤沈下が起こり、家が傾いてしまう可能性が高いです。このような再沈下事例の報告が多い上に、再沈下保証はつきません。
4. まとめ
家の傾きは直すことができます。放置しておくとどんどん傾きが進んでしまう可能性がありますので、家が傾いていると感じたら、できるだけ早く調べてみましょう。
家の傾きの状態、地盤の状態などによって、最適な工法は異なります。安ければよい、高ければよいということでもありませんし、業者によって技術力も異なります。大切な住まいのことですから、どの業者に依頼するかは慎重に選ぶようにしてくださいね。