地盤沈下を見逃すのは危険!住宅や住民に与える影響をチェック
地震でも起こらない限り、地盤沈下なんて、滅多に発生しないものだと思っていませんか?
実は、地震以外の自然現象や人為的原因でも発生する可能性があるのです。窓の開閉がしづらい、最近なんだかめまいがする…それは知らないうちに発生している地盤沈下が原因かもしれません。
地盤沈下が発生すると、住宅や住民にどんな影響があるのかチェックしてみましょう!
目次
1. 地盤沈下とは?
地盤沈下とは、地面が徐々に沈んでいく現象のことです。一度沈下してしまうと、自然に元に戻ることはありません。少しずつ沈下していくこともあれば、一気に沈下が進んでしまうこともあります。
地盤沈下の中には、広域で発生するものと、局地的に発生するものがあります。広域で発生した場合、建物全体が均等に沈下する場合もあり、沈下していることに気が付かないケースもあります。
2. 地盤沈下が与える影響
少しくらい地盤沈下しても大丈夫だろうと考えている方もいるかもしれませんが、それは危険です。住宅はもちろん、人体にも悪影響を及ぼす可能性があります。思い当たる部分がないかを考えながら、地盤沈下が住宅や住人に与える影響をチェックしましょう。
2-1. 地盤沈下が住宅に与える影響
扉や窓の開閉がしづらくなる
地盤沈下によって家に傾きが生じると、扉を閉めるのに力がいるようになったり、窓を開けるときに引っかかってしまったり、窓のカギが上手く閉まらなくなったりします。『最近窓を開けるときに引っかかるな…』なんてことがあれば、地盤沈下の影響かもしれません。地盤沈下が進むと、窓や扉が最後まであけられなくなってしまう可能性もあります。
地震などが発生していないのに壁やタイルにひびが入る
地震や台風などの災害が発生したわけではないのに、気が付いたら壁やタイルにひびが入っていれば、それは地盤沈下の影響かもしれません。小さなひび程度なら直ちに生活に支障がでるわけではありませんが、大きな亀裂が入ってしまう場合もあります。
土間がある家では、土間にも亀裂が入る場合があります。
壁と柱の間に隙間ができてしまう
壁と柱の間に隙間ができてきたら、地盤沈下が影響しているかもしれません。空調の効きが悪いと思ったら、こうした隙間から冷たい風が入ってきていたり、冷やした空気が出て行ってしまったりしているということもあり得ます。住宅の気密性や断熱性が損なわれることで、光熱費も高くなってしまうのです。隙間から、虫などが侵入しやすくなるリスクもあるでしょう。
雨漏りしてしまう
住宅の傾きにより、雨漏りが発生してしまう場合があります。雨漏りが発生すると、カビが発生したり、木が腐ったり、室内の家具などに影響があるだけではなく、家全体が傷む原因にもなります。
ガス漏れがおこってしまう
傾きによってガス管に負担がかかると、ガス漏れが発生する可能性もあります。ガス漏れはほんの少しであっても非常に危険です。
初めは小さな違和感から始まるかもしれませんが、地盤沈下が進むと、最悪の場合、住宅が倒壊する危険性もあります。倒壊まではいかなくても、傾きや雨漏りによる腐食などにより、災害への耐性が下がってしまうことは避けられません。地盤沈下によって、不動産としての価値が下がってしまうリスクもあります。
窓が空けにくい、隙間風が来る、といった違和感がある場合は、早めのチェックが重要です。
2-2. 地盤沈下が住人に与える影響
地盤沈下によって住宅が傾いてくると、体調にも影響が出てきます。目に見えるような傾きではなくても、吐き気やめまいなどの症状が現れることがあり、ふらふらとした感覚に陥る可能性があります。もっと傾きがひどくなると、頭痛がしたり、睡眠障害や食欲不振につながったりする可能性もあります。
1,000mm(1m)あたり5~6mmの傾斜(0.29°~0.34°)があると、違和感があると感じ、それを超えると傾きがあると自覚できるように…体調不良が起こるのは1mあたり10mm(1cm)程度の傾斜(0.57°)になったあたりからといわれています。1mあたり1cmの傾斜というのは、床のある地点から1m進んだ地点の高さが1㎝高いもしくは低い状態です。
これくらいの傾きであれば、違和感があると感じつつも慣れてしまい、知らない間に体に負担がかかってしまっているということもあるので、注意が必要です。
3. プロの業者に依頼して家の傾きを調べる方法
簡易的な方法で家の傾きがあるとわかったら、やはりプロに診断してもらうのが安心です。
プロに依頼する場合には大きく2つの選択肢があります。
3-1. ホームインスペクション(住宅診断)を利用する
ホームインスペクションでは、家の傾きだけではなく、配管などを含めた住宅全体の診断をして報告書を作成してもらえます。修繕が必要かどうかの相談をすることもできます。費用は、一般的な住宅で10万~15万円程度が相場ですが、これは基本的な調査に対する費用なので、すべての部屋の傾きを調べてほしい、床下や屋根裏まで調査してほしい…といった場合は、追加の費用がかかることが多いです。
3-2. 家の傾き修繕の専門業者に依頼する
ホームインスペクションは調査のみなので、傾きを修繕したい場合は別途業者に依頼する必要があります。初めから傾きを修繕したいと考えているならば、家の傾き修繕の専門業者に依頼するのが良いでしょう。工事が前提であれば、調査自体は無料で行ってくれる場合が多いです。調査のみを有料で行ってくれる業者もあるので、工事を考えていない人も相談してみるとよいでしょう。
家の傾き具合や、工法によって費用は異なりますが、300万円程度かかることが多いです。
施工範囲が狭い場合は100万円程度で済むこともありますが、範囲が広い場合や建物が重い場合などは500万円以上かかることもあります。
相場をはるかに超えるような費用を提示する業者は避けなければなりませんが、家の傾きの修繕は技術が必要なので、安さだけで選ぶのは危険です。確かな技術を持ち、納得のいく金額を提示してくれる業者に依頼しましょう。
4. 地盤沈下の原因
地盤沈下の原因には、自然現象によるものと、人為的なものがあります。それぞれの原因について、ご紹介します。
4-1. 自然現象による原因
地震による地殻変動
大きな地震が発生して地殻変動が起こると、広域で地盤沈下が発生する可能性があります。エリア一帯が沈下するので、気が付かないケースもあります。
地震などによる液状化現象
水と砂が多い地盤で地震が発生すると、水と砂が分離して水分が流出する液状化現象が発生する場合があります。このことにより水分量の均衡が崩れて、地盤沈下が引き起こされます。
地下水の変動
梅雨や台風などの自然現象や、地球温暖化などによって地下水位は変動しています。この変動を繰り返すうちに、建物の重さに耐えきれなくなり、やがて地盤沈下を起こしてしまうことがあります。
土地の乾燥
もともと水分を多く含んだ土地において、乾燥が進むと土地が収縮してしまい、地盤沈下を引き起こす可能性があります。
地下空洞の崩れ
地層には小さな空洞がありますが、雨などによってその空洞が大きくなる場合があります。空洞が大きくなると地盤が弱くなり、建物の重みに耐えられず地下空洞が崩れることで地盤沈下が起こります。また、地震によって地層がずれ、空洞ができてしまうことで地盤沈下が起こることもあります。
4-2. 人為的な原因
地盤の強さに合わない重たい建物の建設
地盤が弱い土地に重たい建物を建てると、その重みに耐えきれずに地盤沈下を起こすことがあります。また、デザイン性を重視したことなどにより、建物全体の重さにばらつきがある場合にも、地盤沈下のリスクは高くなります。
過剰な地下水の汲み上げ
地下水を汲み上げすぎると、地盤にもともとある空洞が拡大してしまいます。そのことにより地盤が建物の重みに耐えきれなくなり、地盤沈下が引き起こされる原因になるのです。天然ガスの過剰採取が原因になる場合もあります。
近隣の土地の大規模工事
近隣の土地で大きく土地を掘り返すなどの工事を行った場合、周辺の土圧が下がるので地番の強度が弱くなります。通常、陥没対策を行ってから工事を行いますが、それが不十分な場合地盤沈下を引き起こしてしまうことがあります。
盛土の締固め不足
地盤が弱い土地に建物を建てる場合には盛土が行われます。盛土をしたらしっかりと固める必要があるのですが、それが不十分であると、雨が降った際に盛り土部分に地下水が浸透して地盤が弱くなり、地盤沈下を引き起こす場合があります。 また、盛土に不純物が多く混ざっていた場合は、地盤沈下のリスクが高まります。
長年の振動が蓄積
近くに線路や幹線道路などがある場合、日々土地に振動が発生しています。その振動が蓄積されることによって、地盤沈下が起こるケースもあります。
5. 地盤沈下かも?と思った時にできること
扉が閉まりにくい、知らない間にひびが入っている、めまいがなかなか治らない…といったことから地盤沈下を疑う場合は、専門業者に依頼して調べてもらいましょう。個人で行うのは手間ですし、正確には判断ができない可能性が高いです。
地盤沈下が起こってしまった場合は、修復工事を行うことになります。工事期間は1週間程度の工法もあれば、1ヶ月程度かかるものもあります。工法によって費用も異なりますが、安くても100万円以上はかかります。しかし、原因の調査もせず、いい加減な工事を行ったことでまた地盤沈下が起こってしまうといったことは絶対に避けなければならないので、値段ではなく、信頼のおける業者に依頼することが重要です。
6. 地盤沈下に悩まされないためにできること
もう住宅を建ててしまった、購入してしまったという場合は仕方ありませんが、これから購入するという場合は、できるだけ地盤沈下に悩まされることのない土地を選びたいですよね。自然現象による地盤沈下は予想が非常に難しく、完全に回避することはできないといえます。しかし、家を建てたいもしくは購入したいと考えているエリアの地盤を確認することで、ある程度予測することはできます。例えば、ローム層や台地洪積層、山地や丘陵地岩盤は良好な地盤とされていますし、海の近くの地層は地盤沈下が起こりやすいと考えられています。もちろん、こうした簡易的な予測だけではなく、地盤調査をしっかり行うことが最も重要です。その結果地盤が弱いことが判明した場合は、地盤改良工事を行うことができます。この際も、信頼のおける業者を選択しましょう。地盤改良工事に不備があっては、どうしようもありません。
住宅を建てた後のリスクを回避するためには、『地盤保証』に加入しておくのも一つの方法です。通常の瑕疵担保責任だけでは地盤沈下は保証されないので注意しましょう。
7. まとめ
地盤沈下は、自然災害が発生した時だけではなく、時間の経過とともに発生することもあれば、人為的に起こることもあります。窓や扉が開けづらい、原因不明の体調不良が続くといった場合には、地盤沈下が原因となっている可能性があります。放置しておくことで、最悪の場合住宅が倒壊したり、頭痛や睡眠障害などの身体的被害を受けたりする可能性もあります。
少しでも違和感があると感じたら、早めに状態を確認し、対策をとることをオススメします。確認が遅れて地盤沈下が進んでしまったら、工事ではどうしようもない状態になってしまうこともありますよ。今回ご紹介した住宅や住民への影響に思い当たることがあれば、早めに調べてみてくださいね。